横浜港

8-1. 広大な横浜港


横浜への移動は30分ほどかかり、タクシーを使用した場合料金は15000円となった。

たどり着いた夜の横浜港は広大な空間にわずかな明かりが点在し、静寂に包まれている。
空は赤暗く、不吉な色合いで、薄く漂う霧が街灯やクレーンのシルエットをぼんやりと照らしている。
昼間の賑やかさとは対照的に、夜の港には人影が少なく、埠頭に立つと、足元に聞こえるのは風に揺れる海の音と、遠くで響く船のエンジン音だけだ。

大さん橋や新港埠頭などの観光スポットを離れ、広大な埠頭に足を踏み入れると、人気のなさが一層際立つ。
薄暗いコンテナが積み重なり、人工的な光が冷たく路面を照らす中、数えるほどしかない作業員が遠くに見える程度だ。
どこからともなく漂う機械の軋む音と、赤黒い空が港全体に不気味な雰囲気をまとわせている。

広大な港湾の景色は、昼間の喧騒から解放され、異様な静けさが漂っている。
そんな中であなたはどうするだろうか?

▶周辺で聞き込みをする場合8-2. 最後の聞き込み
▶目的の埠頭に移動する場合8-3. 魔の埠頭


8-2. 最後の聞き込み


夜の横浜港は広大な空間に寂しさが漂い、人通りはほとんどない。
港の広がりの中で、わずかな街灯が淡い光を放つだけで、その光さえも足元の影を濃くする。
赤暗い空が不気味に広がり、冷たい風が吹き抜ける。
作業用クレーンやコンテナが立ち並び、港湾の機械的な音だけが静寂を破るが、それ以外には人の気配がほとんど感じられない。

聞き込みをしようとするも、周囲には人影がなく、わずかに見かけるのは遠くの埠頭で忙しなく動く作業員の姿。
しかし、彼らもこちらには無関心で、声をかけようにも距離がありすぎる。
足元の赤い靴の痛みが徐々に強くなる中、港の広大さと無人の感覚が、孤立感を強めていく。

港で人に聞き込みを行う場合、まず幸運判定に成功して人に出会う必要があります。
さらに、その人が「つわどこ」の現れる埠頭を知っているかどうかを、同じく幸運で判定します。
そして、その事をうまく聞き出せたかどうかを交渉技能で最終的に判定します。
(本筋の流れではない救済処置なので、判定を厳し目にしています)
一度の聞き込み挑戦ごとに30分時間が経過します

🔽聞き込みが成功した場合


散歩している地元民らしき男性からこのような話を聞ける。

「ああつわどこね、それだったら向こうの〇〇埠頭だよ」
「でも興味本位だったらやめといたほうがいいよ…」
「あそこは本当に定期的に犠牲者が出るんだ」
「今じゃ地元民は誰も夜には近づかないよ」


8-3. 魔の埠頭


🔽横浜港を経由せず直接埠頭に来た場合


横浜への移動は30分ほどかかり、タクシーを使用した場合料金は15000円となった。

横浜の埠頭にたどり着いた時、空は不気味な赤暗い色に染まり、まるで夕焼けと夜が入り混じったような異様な雰囲気が漂っていた。
風がひんやりと湿っていて、海から吹き上げる生臭い潮風が肌にまとわりつく。
耳を澄ませば、波の音とは違う、遠くから何かがうごめくような低いざわめきが聞こえてくる。
あたりには誰もおらず、人気のない埠頭は異様に静かだが、その静けさがかえって空気を重くし、不安をかきたてる。

静寂に包まれた埠頭で、突然背後から「つわどこ…」という不気味な囁きが耳に届き、その不気味な声に背筋が氷のように冷たくなる。
恐怖が一瞬で全身を貫き、心臓が早鐘を打つように鼓動を強める。
ゆっくりと、戦慄に震える体で背後を見ると、そこにやつは立っていた。

その姿は異様で恐ろしく、息を呑むほど不気味だった。
全長は2メートルを超える巨体で、その全身を覆う鱗は、赤黒く光を反射しており、生臭い湿気が漂う。
その体からは海水がぼたぼたと滴り、海の冷たさと腐敗の臭いが混ざり合ったひどい匂いを放っている。
皮膚は鱗に覆われ、海中の生物のような滑り気を帯び、足元には不規則に広がるヒレが付いている。
どこか人間らしさを残しつつも、化け物の特徴を強く持つその存在は、まるで異世界から這い出てきたかのようだ。

ボサボサと伸びた長い髪は、海の泥や藻にまみれていて、動くたびにその重さでぬめりを放つ。
髪の隙間から覗く瞳は、まるで底知れぬ闇を宿したような冷たさで、こちらを捉えて離さない。


8-4. つわどことの対峙


覚悟していたこととはいえ、異形の存在「つわどこ」と実際に遭遇してしまったあなた方はSANチェック。

 SANc:0/1D10 

つわどこは、海水を滴らせながら、ゆっくりと、だが確実にこちらへと近づいてくる。
ひとつひとつの足音が鈍く、湿った音を立てて響き渡るたびに、心臓が縮むような感覚に襲われる。
ジリジリとその距離が縮まるごとに、逃げ場がないことが現実味を帯びていき、全身に冷や汗がにじんでいく。

一歩、また一歩——つわどこの巨体が迫ってきている。
空気が重く、まるで足元に根が張っているかのように、動けない。
焦燥感が胸の中で膨れ上がり、呼吸が浅くなるのを感じるが、足は動かず、視線はその不気味な姿に釘付けになるばかり。
近づくたびに漂う生臭さが強まり、心臓は喉の奥で激しく脈打ち始める。

▶どうぞと言わない場合8-5. つわどこの恐怖
▶どうぞと言う場合  8-6. つわどこの正体


8-5. つわどこの恐怖


🟡KP向け:つわどこの脅威


つわどこは元は深きものですが、現在は幽霊のため、こちらからの物理干渉は無効となります。
それでいて、あちらからは物理的に接触してくるので実質無敵という無法ぶりです。
「どうぞ」と言うキーワードを入手していないPCには当てずっぽうで頑張ってもらうしか有りませんが、靴を譲るニュアンスの言葉が出たらそれでOKとしてもらっても大丈夫です。

必死の抵抗むなしくつわどこがジリジリと迫ってくる。
その巨体が闇に浮かび上がり、無機質な視線を送りながら、一歩一歩こちらへと距離を縮めてくる。
呼吸が浅くなり、足はまるで地面に縫い付けられたかのように動かない。
逃げる術もなく、背筋が凍りつく中で、つわどこの巨大な手が突然足元に伸びた。

次の瞬間、強力な手が足首を掴む。
万力のような力で、骨が軋み、筋肉が引き裂かれる音が耳元で響く。
足を引っ張られる感覚が広がり、足首から先にかけて激痛が走る。
まるで体が真っ二つに裂けそうなほどの痛みが、意識を白く塗りつぶしていく。

その手は止まらず、さらに強く足を引きちぎろうとする。
骨が砕け、皮膚が裂け、血の感覚が冷たく広がる。
そのあまりにも圧倒的な痛みに、視界がぐらりと揺れ、意識が急激に遠のく。
世界が遠ざかり、まるで痛みから解放されるかのように感じながらも、心の中では恐怖が渦巻き続けていた。


🎲判定:CONイクストリーム(6版はCON×1)
判定成功!
なんとか一命を取り留めることができる。
気がつくと病院におり、命をとりとめたものの足を失うことになる。

クリア処理:SAN値回復なし、DEXを1に
判定失敗...
PCロストエンド


8-6. つわどことの正体


「くつはどこ…くつはどこ…」
かぼそげにつぶやくその声は、巨体に似合わずまるで幼い少女のようにも感じられた。

あなたが「どうぞ」と声をかけた瞬間、つわどこは静かに動き始めた。
その巨大な手が赤い靴に触れ、まるでずっと探し求めていた宝物を扱うかのように慎重に、しかし確実にその靴を掴んだ。
そして、驚くべきことに、今まで何をしても決して脱げなかった靴が、つわどこの手によってゆっくりとするりと外されていった。
足を締めつけ続けていた呪いのような圧力が一気に解かれると同時に、長い間続いていた苦しみから解放されたかのような感覚が足に広がった。

つわどこは、その赤い靴をしばし見つめていた。
表情は見えないが、その仕草には深い感慨が宿っているように感じられた。
長い年月を経て、ようやくその手に戻った靴を、つわどこは大切に扱いながら、自分の足に慎重に履き直した。
怪物の手にある赤い靴は、今まで重くて恐ろしい呪いを帯びていたはずだが、今はまるでそれが解き放たれたかのように、輝いているように見えた。

つわどこはゆっくりと、その赤い靴を自らの足に履き直す。
その動作はまるで、大切な何かを取り戻したかのような慎重さと、どこか懐かしさすら感じられるものだった。
そして、赤い靴が完全に足にフィットした瞬間、つわどこの姿がボロボロと崩れ始めた。
鱗に覆われた巨体は徐々に砕け落ち、海水を滴らせた異形の姿が消えていく。
そこにはもう、海から這い上がってきた恐ろしい化け物の影はなかった。

やがて、崩れ去った姿の中から現れたのは、幼さの残る少女の幽霊だった。
彼女は赤い靴を履いて、儚くも美しい姿で立っている。
風にたなびく髪が、どこか懐かしさと哀しさを帯びているように感じられるが、彼女の魂はようやく安らぎを得たのだろう。

少女は薄く微笑むと、「ありがとう」と貴方がたに頭を下げ、静かに消えていった。

ED3:命の対価