第8話「DREAM COME TRUE」

共通パート
-1. 再び夢の国へ
ゲートを通った先にあったのは以前と同じ、周囲を岩壁に囲まれた薄暗く狭い階段だった。
階段は果てしなく続き、先を見通すことはできない。

「さて、チャッチャか歩くカマー」

「女王様もきっと首を長くして待ってるナッシュ」
>魔法少女同士の交流タイム
🟡KP向け:PC同士の交流の誘導
ここではPC同士の交流時間を厚めにとってください。
脅威が去った喜びを分かち合ったり、まだ残る不穏分子に対する不安を共有してもよいでしょう。
君たちは、周囲を岩に囲まれた薄暗い石畳の階段を慎重に降りていく。
果てしなくも感じられたその階段を降りきった先には、まばゆい光が広がっていた。
光の広がる出口の先、そこに広がるのは何度見ても心奪われる幻想的な光景。
あなた達は透き通る空のもと、小川の流れるきれいな草原や、まるで絵本の中のように美しい橋をわたり、虹の橋に鎮座する白銀のお城へとたどり着く。
-2. 女王その正体
🟡KP向け:女王様のRP指針について
女王(偽)ですが、最初は二人の功績を褒め称え、二つの世界に平穏が訪れたことを強調します。
残る少女のことなど、疑問を投げかけてもはぐらかすばかりでろくに答えることは無いでしょう。
しかし、突如笑い出したかと思えば、平穏が訪れたのは勘違いであり、逆に世界が窮地に追い込まれつつあることを愉悦ながら明かし出します。
PCが話の途中で反撃を試みる場合、その場で金縛りのように動けなくなる演出を挟んでください。
これは使っている夢/希望エネルギーが偽の女王を介したもののため、そのコントロール権もまた偽の女王にあるためです。
高い天井には複雑で精巧な装飾が施され、光が反射して美しい模様が床に映し出されている。
壁には色とりどりのタペストリーがかけられ、その間をくぐるようにして長い赤い絨毯が玉座へと続いていた。
玉座の上には、美しくも威厳ある女性が座していた。
一見ただの美しい女性だったが、しかしてその姿は見上げるばかりに巨大であった。
優雅ながらも威厳に満ちた雰囲気を放つ彼女は、この異世界に置いてもさらに特異で、まさに女王という言葉がふさわしいと感じることだろう。

「良くぞ来てくださいました、ふたりとも」
「無事再開できたことを嬉しく思います」
「そして、良くぞストレッツの首魁を討ち取ってくれました」

「これにより、目覚めの世界に満ち溢れていた負の感情エネルギーの大部分が消滅しました」
「もはやストレッツの脅威は去ったと見てよいでしょう」
「ええ、本当に良くやってくれました…」

「これによって二つの世界は平穏を取り戻していくことでしょう」
「目覚めの世界の人々は昔のように夢と希望を取り戻し」
「それによってこの夢の世界は更に満たされ、昔のように沢山の活気を目覚めの世界へと送り返す」

「活気に満ちた目覚めの世界は、沢山の人が夢を実現させ」
「それを見た更に多くの人が新しい夢と希望を抱くようになる」

「これを繰り返し、二つの世界はより良い方向へ向かっていくはずです」
「二つの世界の均衡と平和を、他でもない貴方達が取り戻したのです」
それを自分ごとのように喜ぶカマーとナッシュの気持ちが宝石越しに伝わってくる。

「とでも思っていましたか?」
「答えは否、ノーです」
次の瞬間女王から発せられた言葉にその場が凍りつく。

「じょ、女王様…?」

「な、何を言ってるカマー?」
そんな君達の様子など気にした素振りもなく、何事もなかったかのように笑顔で女王は言葉を続ける。

「そもそもおかしいと思わなかったでしょうか?」
「なぜ、夢の国と目覚めの世界で良い循環が続いていたのに、突然目覚めの世界から送られる夢と希望が減ってしまったのか」

「実のところ減ってなどいませんでした」
「単純に私がそれをせき止めていたのです」
「それによって地上から活力が消え、負の感情があふれるようになってしまったのです」

「しかし、集まった負の感情エネルギーを私への対抗策に使うとは予測できませんでした」
「あの規模になれば私も消耗は避けられないことでしょう」
「そこでこの国に伝わる言い伝えの守護者を利用する手段を思いついたのです」

「目論見は成功」
「私を倒そうとするストレッツの脅威は去り」
「堰き止めて持て余していた夢エネルギーと希望エネルギーを使い切ることができました」

「これでもはや、私を阻むものは有りません」

「じょ、女王様…何を行っているカマー!」

「う、嘘ナッシュよね?」
「ただの冗談ナッシュよね?」

「ふふふ…」
「まだ、私が女王だと思っているのですね?」
「答えは否、ノーです」
美しい夢の国の女王は一つ微笑むと、清涼だったその場の空気が突如淀んだ息苦しいものに変わる。
純白のドレスの裾がまるで黒い染みが広がるかのように色を変え始め、美しかった金髪はどろりとした液体のように溶け出した。
滑らかでシミ一つないその肌も、徐々に暗く崩れ落ち、まるで何かが女王の中から這い出ようとしているかのように不気味に蠢く。
その姿は徐々に崩れ去り、まるで蝋人形が溶けていくかのように美しさが崩壊していった。
白いドレスは黒い液体に飲み込まれ、真っ黒な染みが広がり、その美しさを無情にも消し去っていく。
溶けた姿の中から現れたのは、顔のない不気味な存在だった。
目も口もないのっぺりとした顔に当たる部分は無機質で不気味で、黒いドレスはまるで闇そのものをまとっているように、見る者の心を震わせる。
その存在は静かに、しかし確実に、周囲の空気を凍らせていった。
まるで暗闇そのものが立ち上がり、あの夢の国の美しい女王がただの幻に過ぎなかったことを思い知らせるかのように。
見る者の心に深い恐怖と絶望を植え付けるその姿は、どこまでも不気味で、もはや夢の国の女王とは呼べない異形の化け物に変貌していた。

「改めて、はじめまして」
「私は悪夢の化身ナイトメア、気軽にナイとお呼びください」

「あぁ、以前のように女王と呼んでくださっても構いませんよ?」
「悪夢の国の女王には違いないので、もっとも住人は私だけですが」
淡々とした様子で自己紹介をする異形の怪物。
その気配はまるでこれまで相手にしてきたストレッツのような、いやそれとは比べ物にならないほど邪悪さを感じる。

「そ、そんな…女王様が…」

「お、お前!」
「私達の女王様をどうしたカマー!」

「ふふふ」
「私が成り代わっていたことに何年も気づかなかった薄情者が吠えるでは有りませんか」

「女王ならとうの昔に私の胃の中です」
「お陰で成り代わるのには苦労しませんでした」
「なにせ、女王のすべてをそっくりそのままいただけたのですから」

「恨むのでしたら無能な自分か」
「それか無力な貴方がたの女王を恨むのですね…」
「もっとも、貴方がたにそのような時間は残されておりませんが」
そういって偽の女王ことナイトメアは貴方達に向かい手のひらを向ける。
すると手のひらから粘性の高そうな黒い液体がドバリと溢れ、あなた達を覆い潰そうと迫る。
よけようとするも、何故か体が微動だにせず、動けない。

「危ない!」

「危ない!」
胸元の宝石が光ったかと思うと、二人の身体を覆っていたリボンがほどけ、強制的に変身が解除される。
それとともに、ナッシュとかマーはあなたたちを弾き飛ばし、自ら身代わりとなって液体に呑まれる。

「に、逃げるナッシュ…!」

「と、とにかくここから離れるカマー…!」
二匹はそう言い残すと、黒い粘液に飲み込まれ、やがて沈黙してしまう。
短い間だが、苦楽をともにした相棒のあっけない最期を目撃したあなた方はSANチェック。
SANc:1/1D4
変身を解除した影響か、体は自由に動く。
ともかく今ここを急いで逃げるべきだと本能が警鐘を鳴らしている。
>逃げるPC達のRP

「ふふふ、良いでしょう…」
「ただの人間に何が出来るわけでもない」
「今回は見逃して差し上げます」
「それに、悪夢を見る人間は一人でも多いに限りますから」
背中越しに偽の女王がひとりごちるのが聞こえる。
そんな声が聞こえてか、聞こえずか、君たちは必死になって走った。
外の様子は先程とは一変していた。
-3. 夢の国の崩壊
透き通る青空は暗雲に覆われ、草花はすべて黒く枯れ果てていた。
風に揺れる草花からは黒い液体が滴り、地面をじわじわと這っていく。
かつて清らかな水が流れていた小川も、今は黒く濁った粘液がゆっくりと流れており、その水面には不気味な泡が次々と湧き上がっている。
周囲に漂っていた爽やかな香りは腐敗した臭いに変わり、空気全体が重苦しく淀んでいる。
かつて美しく架かっていた虹は消え去り、代わりに黒い触手が空に向かって不気味にうねっている。
白く輝いていたお城は、今や黒ずんだ影に包まれ、ひび割れた城壁から不気味な粘液が流れ出していた。
かつて光を浴びて輝いていた塔も、暗闇に覆われてぼんやりとした輪郭を見せるだけで、その壮麗さは完全に失われている。
夢の国の幻想的な風景は闇と不気味な影に飲み込まれ、まるで終末の世界が広がっているかのような光景に変わり果てていた。
あなた達はそんな悪夢のような世界をただただ走り抜け、岩階段にたどり着き、長い長い階段を休むまもなく駆け上がり必死で逃げた。
早くこの悪夢から目が覚めるように、そんなことを祈ったかもしれない。
-4. 変わり果てた現実
階段を登りきり、光の指す出入り口へと飛び込む。
眩しさに目が眩む中、徐々に視界が落ち着き、世界の姿があらわになってくる。
そうしてあらわになった世界は、まだ悪夢の中にいるような地獄絵図だった。
先程まで晴天だった空は、夢の国同様暗雲に覆われ、光一つ通さない。
そんな中でも地上は普段であれば人工の光によって明るく照らされているはずだが、現在は暗く沈黙している。
周囲の建物を見やれば、そこかしこがひび割れ、崩壊し、その様子はもはや文明が滅びてしまったのではないかとすら錯覚させる。
住み慣れた街、その変わり果てた姿を目撃したあなた方はSANチェック。
SANc:1/1D5
🟡KP向け:発狂について
ここでの発狂は、KPCへの偏執に固定されます。
何を置いてもKPCのもとにたどり着き、安否を確認しようとすることでしょう。