1.序章:ループ1周目
KP向けループ時の処理
・ループ開始は、必ず正午ごろ太宰府駅で文子が着信を受けた場面から始まります・ループ開始時にHPとMPもその時点のものに戻るので、ループの度全回復させてください
・SAN値は勿論据え置きですが、ループ開始時点で不定値のリセットが挟まれます
・ループ開始時にSANチェックが発生しますが、慣れは適用されず徐々に減少値が増えます(0/1D[周回数])
KP向けこの周回の目的
この周回では恵子の調査をメインで行う想定ですが、日中有益な情報はあまり得ることが出来ません。ループ直前に、恵子に呼び出された文子に付いていき、恵子と文子の会話から恵子が藤原時平に乗っ取られていることが知れれば、最低限大丈夫です。
ループ開始
迫る雷の閃光が晴れた後、通りゃんせの音楽が聞こえてきて、0-2.太宰府駅到着にて、文子が着信を受けた場面を再度描写し、時間が戻っていることを示すようにしてください。
その際、手の甲にループ残数を示す正の字が浮かび上がり、一画欠けたあと再び消える描写も挟むようにしてください。
KP向けループの真実について
この先、最大7周ループを行いますが、このループは現実世界の情報をもとに夢の中でシミュレートされた擬似的なループになります。探索者がループ世界が現実ではなく夢と気づくのは後半になるため、当面はあくまで現実であるような描写を心がけてください
この夢でのループ目的は、太宰府と自身に降り掛かっている危機の全貌と対応方法を把握し、それを最終的に現実世界に反映させ、現実で迫る危機(眼の前に迫る雷と、神格招来による太宰府の崩壊)を防ぐことにあります。
KP向け正の字について
残りループ数を示すもので、最初五画から始まり、5周を終えた時点で0になりますが、探索者が望むのであればもう二画たされて最終的に七画分(7周)ループすることが可能です。このように、ループの周回数に制限が設けられているため、各周回で特定の課題を果たさないとクリアが難しくなります。
もし探索に詰まったり、間違えた方向に進みそうな場合は、適宜NPCによる誘導などを行ってあげてください。
描写/セリフ例
まばゆい閃光に包まれ視界がゆがむ中、何やら音楽が聞こえてくる。<♪着信音:とおりゃんせ>
この音楽は聞き覚えがある、天神様ゆかりのあの音楽だ。
やがて音楽に加え、人々の喧騒が聞こえてくる。
いつしか目が慣れ、目を開くと、驚くべき光景が目の前に広がっていた。
そこは見覚えのある太宰府駅前の光景だった。周囲は明るく人も多い。
先程までの夕暮れの天満宮の光景は影も形も見当たらなかった。
驚愕とともに、ただただ行き交う人々を眺めていると、手の甲に熱さを感じる。
見やれば手の甲に正の字が浮かんでいた。
勿論そんなものは書いた覚えも書かれた覚えもない。
その正の文字からすぅっと一画かけて、次に気がついたときには透けて消えてしまった。
そして驚愕すべき光景がもう一つ。
先程からなる音源の方を見やれば、見知った女性がちょうど懐からスマホを取り出した場面だった。
彼女は画面を確認し眉をしかめると、再びスマホを懐にしまって口を開く。

「すまん、出鼻がくじかれたな」
「早速だがまずは参道を案内しよう」

「この辺は最近は色んな店がでてて面白いぞ?」
「スイーツとかは歴史的には浅いかもだけど気にすんな!」
そう、眼の前に居るのは先程赤い海に沈んでいたはずの文子。
奇々怪々なこの状況に、君の常識が崩れる音がする。
SANc:0/1
調査方針相談
一周目は情報不足のため、ここでは唯一の取っ掛かりである恵子の調査を行うことを想定しています。
極力探索者の方から自発的に調査方針を提案させるように促し、どうしても思い浮かばない場合は文子から助け舟を出してください。
もし、恵子の調査以外のことも調べる場合は、適宜先の展開で調査可能な情報を参照してください。
KP向けループ時の文子のスタンスについて
文子は探索者の探索を全面的にサポートしてくれるお助けNPCですが、探索者と違いループ前の記憶を持ちません(次周以降も同様)。ループのことを話したのなら素直に信じて協力し、話さない場合も探索者の異変を察知して聞き出す、着いてくるなどして強制的に同行してきます。
探索の主体は探索者ですが、文子の方からも積極的に足りない部分を補佐させるなどして、信頼と愛着を持ってもらえるよう動いてください。
KP向けループ時の文子のRPについて
ループ冒頭の文子は、いつも同じ状態にリセットされています。探索者が干渉するまではこれまでの周回と同じ言動を行い、探索者の言動に対するリアクションも、前周回と同じことをされたら同じように返すことを心がけ、ループ感を演出するようにしてください。
描写/セリフ例

「どうした?ボケーっとして?」
「昨日夜遊びしすぎてお疲れか?」
●文子に情報共有をせず方針に悩む

「お前らなんか隠し事してるだろ」
「急に様子が変になったし、困ってるのはわかる」
「あたしで良ければ力になるからとりあえず話してみな」
●ループしてきたことを伝える

「ループ…ループか…」
「道真公のお膝元だしそういうこともあるか…?」
「まぁ冗談じゃないってのはわかるよ、だから信じる」
●雷雲にのまれたことを伝える

「雷雲と雷か、まるで伝説に聞く天神様だな」
「しかし何だって京都じゃなくて太宰府にそんなものが?」
●恵子が文子を殺したと伝えるor殺したと疑ってると伝える

「恵子があたしを?ないない」
「あいつなら通り魔に刺された私の前で偶然包丁手に持ってるくらいの間の悪さはありそうだけどな」
●恵子が文子を恨んでる様子だったと伝える

「恨み…心当たりないなぁ」
「多分どうでもいい恨み言だろう」
●一通りの情報共有の後方針整理を促す

「まぁ状況はわかった」
「しかしこれからどうする?」
●恵子の調査がどうしても浮かばない場合

「んー当てがないなら恵子の様子でも調べてみっか?」
「特段変わったことはないが、なにかに巻き込まれてるかもだし」
MEMOループ世界の人物について
ループ世界は、あくまでループ時点の現実情報を読み取り、夢の中に再現した世界で、そこに登場する人物も大半は本物ではありません。ただし、その人物の情報を100%コピーしているため、性格や気質は本人そのものであり、記憶の連続性以外は当人と言って差し支えありません。
探索者と後述のNPCの一人だけは、夢を見ている側の人物のため、意識は当人のもので、それ故ループをまたぎ記憶を引き継ぐことが出来ます。
恵子についての聞き込み
他の先生も手が塞がっているため、現状聞き込みが行えるのは幼稚園前にいる保護者であるマダム達や園児からになります。
情報収集はランダム表にて行います、詳しいルールについては下記(マダムからの聞き込み)を参照してください。
ただ、ここで得られる情報は、フレーバーメインで有意義なものは無いため、探偵気分で盛り上がれるRPイベントくらいに捉えてください。
(この後、藤原時平が真の敵役として登場するので、恵子も同じ藤原姓であることを強調し、前フリだけ出来ておくとよいです)
描写/セリフ例
再び参道を通り、恵子の勤めるという幼稚園へと向かう。参道は寄り道をしなければ非常に短く、駅から数分で着くことが出来た。
幼稚園は、太宰府天満宮の境内、太鼓橋から心字池を挟んで対岸側にあった。
恵子らしき姿は見当たらないが、午前保育を終えた組の園児と、その保護者らしきご母堂たちが談笑している姿が目に入る。
彼女たちや園児たちからなら話を聞くことができるかもしれない。
マダムからの聞き込み
RULE聞き込みのルール
・交渉技能に成功すると1d10を振り、出た目の情報が得られる・交渉技能に失敗すると2d10を振り、出た目の情報が得られる
・探索者間で順番に振り、合計4回聞き終わると終了し、次の尾行イベントに進みます
・同じ目がでた場合も振り直し等は行わない(マダムは同じ話を何度でもする)
出目 | 教えてもらえる情報 |
---|---|
1 | 度々奇妙な夢を見ることにちょっと悩んでいるらしい |
2 | 太宰府で藤原の名字という理由で、子供の頃いじめられていた時期があったらしい |
3 | 3年前くらいまでは怖い先生として有名だったらしい |
4 | 普段優しいが怒ると烈火のごとく怒り、執念深いらしい |
5 | 恵子先生はうめ組の担任だが、ほかの組の子たちからも慕われているらしい |
6 | 幼馴染の巫女さんと会うたびに口喧嘩をしているらしい |
7 | 仕事熱心だが定時にはダッシュで直帰するらしい |
8 | ばら組の寺門先生に告白されて断ったらしい |
9 | 園児からは恵子先生と呼ばれており、名字ではあまり呼ばれないらしい |
10 | 園児とおいかけっこしている時、揺れがすごいらしい |
11 | ふじ組の橘先生はこの間不倫をして離婚調停中らしい |
12 | ばら組の寺門先生は40にして未だ女性と付き合ったことがないらしい |
13 | きく組の七海先生は今年に入ってもう10回遅刻したらしい |
14 | ひまわり組の雪深先生とはプライベートでも一緒に遊びに行く間柄らしい |
15 | もも組の前田先生とは一見仲よさげに見えるが犬猿の仲らしい |
16 | さくら組の南先生が度々ぽかするのをよくカバーしているらしい |
17 | 園長先生からの評価は高いが、園長先生のことは苦手らしい |
18 | 前任の小池先生は園内おめでた婚で引退したらしい |
19 | 幼稚園の先生以外では、ジャーナリストになりたかったらしい |
20 | 誰かと付き合っているらしい |
園児からの聞き込み
「恵子先生好きー」「でも藤原だしきっと悪いことしてるんだよ?」
「そんなことないよー、なんでそんな事言うの?」
「僕ちょっと怖いかも…怒るとすごいの先生…」
「僕先生と結婚するのー」
などと言った大変有意義な情報を聞くことができる。
MEMO聞き込み情報の補足
恵子は子供の頃、藤原姓(道真公を左遷に追いやった人物の姓)を理由にいじめられていました。その際に助けてくれたのが文子でしたが、当の文子は覚えていません。
以来、気難しい恵子にとって数少ない気が置けない友人として付き合いが続いていましたが、3年前にひょんなことから付き合うことになります。
そこから尖り気味だった恵子はめっきり丸くなり、今は文子との時間を多く過ごすために、仕事が終わると直帰するほどです。
奇妙な夢を見るのは、遠い祖先である藤原時平から、夢を介して干渉を受けているためです。
恵子を追跡
これは、園児の一人(0周目で会ったたけし君)を、担任の先生が外遊戯の際に見失ってしまったのを、代わりに探しに行っているためです。
この園児はちょっとした問題児で、よく現在国立博物館で展示中の牛を見に行っているため、恵子はそこに向かっています。
探索者は恵子をこっそり尾行することも出来ますし、話を聞いたうえでついていくことも出来ます。
恵子自身は特に後ろ暗いことはないので、特段隠し立てはしませんが、文子に対しては0周目同様怒りを顕にします。
国立博物館につくと、園児と恵子の会話から園児が国立博物館内の牛を見に行っていたことが聞き取れます。
その際、文子の方から観光客や園児の間で天満宮に元々11体居た御神牛に加えて、国立博物館に12体目の御神牛が現れたと話題になっていることが聞けます。
描写/セリフ例
園前であなた達が聞き込みをしていると、不意に噂の人恵子が幼稚園から出てくる。彼女はコチラには気づかない様子で、園を出て本殿方向へと向かっていく。
●黙って尾行する場合
判定成功!
君達は恵子にバレずに彼女の後を追うことができる。彼女は絵馬堂の脇を抜け、楼門の前を通り、宝物殿前を抜け、遊園地前を通り、九州国立博物館の方へと向かっていく。
その間、幾度か彼女はキョロキョロと周囲を見渡し、何かを探している様子だった。
判定失敗...
尾行失敗へ●尾行がばれた場合/話しかける場合

「何か用?文子」
「あたし、見ての通り急いでいるんだけど」

「やぁ恵子偶然だな」
「いや、たまたま見かけたもんでな?何してんのかなと思って」

「別になんでもいいでしょう?」
「仕事よ仕事、たけし君が外でお遊戯中にいなくなっちゃったって担任の先生から相談されて探しに行ってるの」
「まぁ多分いつもの九国のあたりだと思うんだけど…」

「そういうことなら手伝うよ」
「こいつらに九国も案内したいと思ってたところだし、なぁ?」

「別にいいけど…邪魔だけはしないでちょうだいね」
「第一文子、あたしまだあの件、許してないから」
その間幾度か彼女はキョロキョロと周囲を見渡し、件のたけし君を探しているようだった。
●九州国立博物館へ
大エスカレーターに乗り、小高い山を登った先には、きらびやかな現代的な建物が立っていた。ここは、九州国立博物館。九州唯一の国立博物館であり、天満宮とも提携する観光の名所だ。

「あ、たけし君!」
「まったくもう、こんな所まで来て…」

「あ、恵子~」
「よっ」

「よっじゃないわよ」
「まったく先生たち心配させて…」
「またお牛さん見に来たの?」

「そうそう、12体目のお牛さん」
「今日も元気そうだった」

「それはなにより」
「満足したなら帰るわよ」
「ほら、帰って一緒にお昼寝しましょう」
そうして恵子とたけしはお手々を繋いで一緒に天満宮の方へと歩み去っていく。
その様子はとても微笑ましいもので、不審さなどは感じなかった。
(こちらの存在がばれている場合は、最後に文子をひと睨みして去っていく)
●12体目の牛について聞く

「ああ、最近園児の間で話題みたいなんだ」
「まずこの天満宮には11体の御神牛がいらっしゃるんだが」
「その全部を触ると幸運が訪れるとか、ドラゴンが現れて願いが叶うとかいう噂があってな」

「そんな中、最近大エジプト展ってのがこの九国で始まったんだが」
「そこにも雄牛像があって、これが12体目の御神牛ってことで話題になってるんだ」
「牛信仰なんて各所であるものだから勿論偶然なんだが」

「いかにも子供が好きそうな話だろ?」
「隠しキャラ、追加戦士ってのはワクワクするもんな」
●怪しさが感じられなかったと話す

「だから言ったろ?」
「しかしこうなると振り出しに戻っちまったな…」
追加調査
この間、再度マダムたちへの聞き込みを行ってもよいですし、希望があれば他のことを調べてもらっても構いません。
マダムたちへの聞き込みを行う場合は、計4回行うことが出来ます。
情報収集は自由ですが、もし菅公歴史館にまだ行っていなければ、このタイミングで行っておくことをおすすめします
ネット調査なども自由ですが、このタイミングでも国立博物館にはいけないことに注意してください。
KP向け職場からの呼び出しLINEについて
0周目であった職場からのLINEによる呼び出しですが、このタイミングでかかってきます。しかし、0周目に出てしまったのはたまたま間が悪かったからで、深刻な様子の探索者に協力しているループ中では文子はこれを無視しています。
本筋にかかわらないため描写は以降省きますが、PLから質問があったらLINE自体はかかってきて、都度無視していることを伝えてあげてください。
恵子からの呼び出し
(この時点で恵子は、黒幕である藤原時平に体を乗っ取られているため、厳密には恵子ではありません)
文子は恵子を全く警戒しておらず、探索者が止めても待ち合わせに向かおうとします。
ここで文子についていかないと、必要な情報が取得できないので、探索者が別行動しようとする場合は、文子の方から同行を促すようにしてください。
(文子たちの会話を聞ければいいので、隠れてついていくなどでも大丈夫です)
KP向け恵子の人格について
恵子は、たけし君を連れ帰ってお昼寝をした際に、夢を介して藤原時平に体を乗っ取られてしまっています。以降の周回では、お昼寝の前は無害な普通の恵子、お昼寝以降は藤原時平に乗っ取られた黒幕の恵子と理解しておいてください。
時平は道真公と同じく平安の人物ですが、使っている体は恵子のもののため、脳の記憶を読み取り、現代知識を得るだけでなく、本人のフリもすることが出来ています。
描写/セリフ例
話し込んでいた保護者たちも時間とともにはけ、幼稚園の方からも人の気配が徐々に薄れ、周囲は静まり返ってきた。時は流れ、影法師はその背を伸ばしていくが、特段変わった様子はなく時間がただ刻々と過ぎていくのみだ。
<♪LINE着信音>
ふと文子の方から聞き慣れた電子音がする。
文子はまたかと顔をしかめ画面を見やるが、お?と表情を変えて発信主を君たちに伝える。

「恵子からだ」
「なんだろ、でるぞ?」

「もしもし?どうした?」
「これから…?いいけど…ほんとどうした?」
「ま、わかった。本殿な。すぐ行く」

「恵子から呼び出しだ」
「あたしは行ってついでに話聞こうと思うけどお前らはどうする?」
君たちの脳裏には本殿前で赤い海に沈む文子の姿が嫌でも浮かぶが、文子自身に警戒心はまるでなさそうだ。
●行くのを止める

「疑うわけじゃないけど、心配しすぎだって」
「あたしとあいつの仲だし、大丈夫大丈夫」
「ちゃんと気はつけるからさ」

「不安だったら着いてきてくれよ」
「それだったら安心だろ?」
藤原時平登場
探索者の行動如何で一度目の不意打ちは防ぐことが出来ますが、最終的には呪術によって拘束され、文子は必ず刺されてしまいます。
それに際し、探索者の行動に関係なく、どこかのタイミングで必ず時平の術で金縛りに合わせるようにしてください。
(目が怪しく光ると共に体がピクリとも動かなくなってしまいます。これはやがて本格的に対峙する際に対策を促すための必須イベントになります)
文子を刺した恵子は自らを藤原時平と名乗り、文子の血を使って偽火雷神を招来してしまいます。
招来された偽火雷神は、赤黒い雷雲そのもので、地上から天に立ち昇り無差別に雷を放ちながら周囲を焦土に変えていきます。
やがて、探索者も雷とともに光の奔流に飲まれ、この周回は終わりとなります。
KP向け時平の目的について
藤原時平はかつて黒い雄牛を信仰し、その邪教の術を用いて宮中を支配していました。ただ、道真公が死後、親族の夢を介して火雷神を招来したことで、宮中を支配していた邪教の勢力はことごとく滅びてしまい、自らも身を滅ぼします。
しかし時平は、死の間際に子孫の肉体を乗っ取って蘇る術をかけていたため、現代になって恵子の体を奪い復活を果たしてしまいます。
この際、道真公の血縁者(文子)が身近にいたため、その血を利用し、自らを滅ぼした火雷神の偽物を招来し、道真公ゆかりの地である太宰府を滅ぼすという、逆恨みの意趣返し計画を思いたったのでした。
KP向け"火雷神≒天神"と"偽火雷神=別天神"
火雷神とは、道真公が宮中にはびこる邪教を浄化するために招来した神"クトゥグア"のことを差します。対して、偽火雷神とは、クトゥグアの召喚しようとして、手順をちょっとでも間違えるとやってくる、クトゥグア並みの力を持つがクトゥグア以上に全く制御の効かない危険な神格"ヤマンソ"のことを指します。
そして少しややこしいのですが、火雷神(=クトゥグア)を呼び出した道真公ですが、周囲の人間はこれを道真公の祟り=道真公そのものと認識してしまったため、火雷神を道真公として信仰し出してしまいます。
これが天神様で、つまるところ天神様とは火雷神をベースに道真公が混ざったものであり、純粋な火雷神(=クトゥグア)とは異なる存在です。
対して、偽火雷神ことヤマンソを作中で別天神と呼ぶことがありますが、これは完全に同じ存在を指します。
簡単にまとめると、火雷神=クトゥグア、天神様=クトゥグア+道真公、偽火雷神=別天神=ヤマンソ、といった感じです。
(実際の天神信仰も、清涼殿落雷事件をきっかけに、近隣で信仰されていた火雷神と道真公が結びつけられたことから始まったとされている)
描写/セリフ例
昼と夜が曖昧になる魔の時間、逢魔ヶ時。沢山の人で賑わっていた楼門周りも、今はあなた達意外に人気はなく、無言で朱に染まる周囲の建物に、神聖さを通り越した不気味さを感じてしまうかもしれない。
ひと気がないこともあって、楼門を抜けると目的の人物はすぐに見つけることが出来た。
楼門を抜けてすぐ、本殿の前の開いたスペースに目的の人物、恵子は居た。

「よう恵子、どうした?」

「・・・」
恵子は黙って文子の手を取り、文子を抱き寄せると、そのままもう一方の手を背中に回し何かを取り出そうとしている。
(位置関係的に、文子の手を引くなどはできても、恵子を止めるのは間に合わなそうとしてください)
CASE特段アクションを起こさない場合
恵子は後ろ手に鈍く光る物を取り出したが、その光は続けざまに密着する文子の懐へと消えていってしまった。あまりにも自然なその動きに、君達も文子当人すら反応できず、数瞬の後、文子の口から鮮血が流れ出たことで、ようやく事態を把握する。
続けざまに懐からもだくだくと血が流れ、彼女の純白の装束を赤く染めるとともに、足元に大きな血の池が生まれる。
文子は事態が飲み込めず、信じられないものを見るような目で恵子を見つめていたが、やがて息も絶え絶えな様子ながら一言漏らす。

「…恵子?…じゃない?」
「誰なんだ…お前は…」

「…腐っても菅原の血か」
「少しは勘が働くらしい」
「まぁ、すでに手遅れだがな…」
口に出した言葉が意外だったのか、恵子は感心と落胆が入り混じった様子で初めて口を開く。
その様子は先程話した恵子の様子とはかけ離れた、不気味さと威圧感を兼ね備えた、まるで別人のような様子だった。
CASE文子の手を引くなどして助けようとする場合
あなたがとっさに手を引くと、それを予期していなかった文子はその場に派手に尻もちを着いてしまう。「あいてっ!」と尻をさする文子だったが、直後に目の前の光景を見て動きが固まる。
そこには鈍く光る凶器を手に、それを文子が立っていた位置に突き立て、文子を冷たく見下ろす恵子の姿があった。
文子は事態が飲み込めず、信じられないものを見るような目で恵子を見つめていたが、数瞬の後このように漏らす。

「…恵子?…じゃない?」
「誰だ…お前は…」

「…ほう、腐っても菅原の血か」
「多少なりとも勘が働くらしい」
そう言った恵子は、先程話した時の様子とはかけ離れた、不気味さと威圧感を兼ね備えた、まるで別人のような様子だった。
恵子は文子を見下したまま、何食わぬ様子で刃物を手に悠然と歩をすすめ、対する文子は倒れた姿勢のまま、後退りをして距離を取ろうとする。

「だが拍子抜けだ」
「彼奴と違って術に関してはさっぱりらしい」
「…止まれ」
それとともに、距離を取ろうとしていた文子の動きが急に止まる。

「な、体が…」
そんな様子の文子に対し、恵子が1歩2歩と距離を詰め…

「かはっ…!」
そしてその深みが増すにつれ、彼女の純白の衣装が赤く染まり、併せて周囲に赤い海が広がっていく。
CASE途中で恵子を取り押さえようなどと近づこうとする場合
友人の危機に、とっさに君達は恵子を止めようと動き出す。すると、文子に視線を送っていた恵子の顔が突如こちらを向いたかと思うと、その双眸が怪しく光り、君たちを捉える。
瞬間、君たちはヘビに睨まれたカエルのように動きを止めてしまう。

「虫けらが…」
「黙っていれば少しは長生きできたものを…」
口はなんとか動くものの、いくら力を込めてもそれ以外の体の部位は、まるで地面に縫い付けられてしまったかのように動く気配がない。
刃物を持った人間を目前に、身じろぎ一つ出来ないという不可思議かつ危機的な状況に、あなた達の背筋が凍りつく。
SANc:0/1D2
文子の下に血溜まりが広がるのを満足気に見つめた恵子は、勝ち誇った様子で大仰な身振りとともにこのように述べる。

「冥土への手向けに教えてやろう」

「我が名は藤原時平」
「菅原へ復讐を果たすべく、藤原の血をもって悠久の時を超え甦れり」
判定成功!
君たちは藤原時平が、菅原道真を讒言(ざんげん)によって太宰府に左遷し、朝廷の実権を握った1000年以上も前の人物だということを知っている。彼は菅原道真の祟りにより38歳の若さで病死したとされている。
判定失敗...
聞いたことがある気もするがよくわからなかった。
「藤原時平だ…?そんなカビの生えた骨董品が一体何の用だってんだ」
「第一何が復讐だ、逆恨みも甚だしい…」
「御託はいいからさっさと恵子を解放しろ」

「ふん、藤原の血にありながら菅原に迎合する裏切り者か」
「どうせ用が済めば別の肉体に乗り換えるつもりだったのだ」
「そんなに大事であれば返してやろう」
「ともにここで果てるがいい」

「何言って…」
血のように赤い光が、そのまま複雑に絡み合い陣のような文様を描くと、その中心から不気味な音が響き渡る。
魔法陣の光は次第に強まり、やがて雷を伴った赤黒い雲が勢いよく立ち上る。
その雲はまるで生き物のようにうねり、天へと向かって急速に広がっていく。
赤黒い稲妻が雲の中で激しく交錯し、その電光が周囲を一瞬にして昼間のように明るく照らし出す。
轟音と共に雷鳴が響き渡り、まるで地と天が共鳴しているかのようだ。
CASEまだ探索者が金縛りにあっていない場合
そんな光景に目を奪われていると、文子に視線を送っていた恵子の顔が突如こちらを向き、その双眸が怪しく光る。その瞬間、君たちはヘビに睨まれたカエルのように動きを止めてしまう。
口はなんとか動くものの、いくら力を込めてもそれ以外の体の部位は、まるで地面に縫い付けられてしまったかのように動く気配がない。

「何ができるわけではなかろうが、羽虫に足掻かれても煩わしいのでな」
「そこで大人しく最期を迎えるが良い」
「もっとも、体が動いた所でこの街にいる限り助かるすべはなかろうがな」
目の前で立ち上る雷雲、そんな中で身じろぎ一つ出来ないという不可思議かつ危機的な状況に、あなた達の背筋が凍りつく。
SANc:0/1D2
やがて、雲は天に昇るだけでなく、周囲に向けて無数の雷を放ち始める。
稲妻は激しく地面を打ち、木々を燃え上がらせ、石を砕く。
大地は震え、雷の轟音が鼓膜をつんざくように響く。
赤黒い雲の中からさらに稲妻が放たれ、その光と音が連続的に繰り返される。
周囲はまるで終末のような光景と化し、雷の一撃一撃が大地に痕跡を残していく。
魔法陣から放たれたこの力の奔流は、自然の摂理を超えた異質な力の顕現そのものであるかのようだった。
君達は目の前の光景に圧倒されながら、ただその凄まじい力の前に立ち尽くすしかない。

「菅原の血によって栄えた街が、菅原の血によって滅びる」
「これほど痛快なことがあろうか」
そして君は目撃する。目撃するはずのない光の筋を。
周囲がコマ送りに見えた。
光がゆっくりゆっくりとこちらに向かってくる。まるでスローモーションのように。
光は分岐を繰り返し、分かれた光の一つがやがて自分たちのもとにたどり着く。
光はそこから天に登り、まばゆい光の奔流が君の視界を埋め尽くす。
MEMO偽火雷神の招来について
本来、火雷神は道真公の血縁者の血を魔法陣に流し込むことで招来出来ますが、ここでは時平はわざと間違った魔法陣を描き、偽火雷神を意図的に呼び出しています。ちなみに偽火雷神を呼ぶのであれば、文子の血である必要はまったくなく、これは道真公への嫌がらせでしかありません。