🟡KP向け:セッション開始にあたり


セッション開始に当たり、シナリオ名のコールをする方がいらっしゃると思いますが、本シナリオはEDによってシナリオ名がかわります。
(正確には縦棒+丸+縦棒のシナリオ名を、101と読むかlolと読むかEDで変わります)
シナリオ名をあえて告げずに開始するのもおすすめです。

🟡KP向け:ココフォリアルーム変数の設定


シナリオ中のセリフ、資料テキスト内に{変数}での記載箇所がいくつかあります。
ココフォリアセッションの際は、下記のルーム変数を設定しておくと、資料やセリフをコピー&ペーストする際、手直しの手間を軽減できます。

PC1名字/PC1名前/PC1呼称/PC2名字/PC2名前/PC2呼称/コンビ名 ※呼称はモモカからの呼称です

🟡KP向け:シナリオ中の略称


RP    :ロールプレイのことです
 SANc  :SANチェックのことです

PC1導入

1-1. PC1導入①


君の妹は体は弱いがよく笑う子だった。
しかし、君にはその笑顔が強がりで、いつも心の内で雨を降らしていることがわかっていた。
君はそんな妹の心に傘を差し、本当の笑顔を取り戻したい。
そう思っていた。

両親と妹のお見舞いに行った帰り道、君の心には深い靄がかかっていた。
妹は元気そうだった。いや、元気に振る舞っていた。
しかし、君は感じてしまった。張り付いたような笑顔の裏、心の奥で泣いている妹の本心に。

妹は昔はどちらかというと泣いてばかりいた。
親元を離れての入院生活、いくら家が近く頻繁に見舞いに行っても心細かったに違いない。
しかし彼女は次第に泣かなくなっていった。
理由は定かではない、しかし一つはっきりしていることがある。
彼女は病床の身にありながらも、自分たちに気を使っているのだ。

その事に気づいた時、君の胸は締め付けられたように苦しくなった。
自分の無力さを突きつけられたような、それでいて人の暖かさに触れてしまったようなそんな感情。
そんな気持ちをもんもんと引きずったままいると、いつの間にか家に帰ってきていたらしく、テレビの音が聞こえてくる。

▶テレビの内容


「本日は”笑い”が私たちの健康にどのように良い影響を与えるかについてお話しします」
「今回はその中でも特に笑いと関係の深いNK細胞と呼ばれる細胞について着目してみましょう!」
「NK細胞、これはナチュラルキラー細胞の略でして、体内の異常な細胞を見つけ出して攻撃する役割を持っています。」
「具体的にはウイルスに感染した細胞やがん細胞などですね」

「では、笑いとNK細胞の関係はどうなのでしょうか?
「実は、笑いは私たちの免疫システムにとってとても良い刺激になるんです。」
「笑うことで、NK細胞の活動が活発化し、体を病気から守る力や病気と戦う力が強化されるんですね。」
「他にも笑うことでストレスを減少させリラックスできたり、笑いは私達の健康にとても大きな効果があるんです。」

「なので、皆さんも日々の生活で笑いの時間を大切にしてくださいね。」
「今日は笑いと健康についての話題でした。毎日笑って、健康的な生活を送りましょう!それでは。」

これだ!と思った。
無力な子供である自分が妹のためにしてあげられること。
この日、エンターテイナーとしての君の人生が始まった。

明くる日、それはエンターテイナーとしての君のデビュー日。
君は意を決して妹の病室の前に立っている。

▶妹との日常RP例


「あ、来てくれたんだ お兄ちゃん/お姉ちゃん」
「…どうしたの お兄ちゃん/お姉ちゃん?」


🎲判定:芸術<お笑い> (技能値1/4)
判定成功!

「あはっ、ははははっ…なにそれ…やだもう…おかしー」

それは、久しぶりに見た妹の心からの笑顔だった。
よほど楽しかったのか、よほど嬉しかったのか。その胸中は定かではない。
ただ、その笑顔を見てこちらも温かい気持ちになってくる。

幸運回復:1D2

判定失敗...

「ふふ、ふふふ……やだなにそれ、もう…おかしー」

それは、久しぶりに見た妹の心からの笑顔だった。

※先入観を与えないために、この時点で内久保の立ち絵や名前は公開しないようにしてください

「何かありましたか?はじめさん!」

大声を聞いてか、慌てた様子で誰かが病室に飛び込んでくる。
君は何度か目にしたことがある、彼は妹の主治医だったはずだ。

「ち、違うんです先生…」
「ちょっと…お兄ちゃん/お姉ちゃんが…ふふ、面白くて…」

妹が笑い混じりに弁解してくれる。

「…そうでしたか」と、その言葉を聞き、医師はホッと胸をなでおろした様子だ。
「ひひ、ふふふ…」と、妹はまだ笑いが収まらない様子だ。

「えーっと君は確か{PC1名前}君だったかな、少しいいですか?」

そんな妹の様子を苦笑交じりに見ながら医師が君に声をかけてくる。

「あんなに楽しそうなはじめ君は久しぶりに見ました」
「彼女は気丈に振る舞っていたが、君たちが帰るといつも寂しそうにしていたんだ」

彼は廊下に君を連れ出すと、そう言って腰を落とし君に目線を合わせ更に語りだす。

「彼女の病気…いずれ手術をせねばならない…しかしそのためには彼女の体力が大事なんです」
「君が彼女をああやって笑わせてくれただけ、彼女は元気付いて手術の成功率が上がる」
「医師の私が頼むのも筋違いだとは思うんですが、どうかこれからも彼女の力になってあげてくれないでしょうか」

そう言って彼は君の目を真っ直ぐ見つめる。

>PC1の返事

「すまないね、頼りない先生で…おっと回診の途中だったんだ」
「いやぁ 兄妹/姉妹 水入らずのところを邪魔してすまなかったね…」
「それじゃあ、またね」

そう言うと医師は会釈をして去っていく。

「あーおもしろかった…」
「…ありがとね、お兄ちゃん/お姉ちゃん」
「こんなに笑ったの久しぶり」


▶妹との日常RP例


「でも急にどうしたの?」

「お兄ちゃん/お姉ちゃんだったら芸人さんになれるよ、それも一番の」

※芸人の一番の部分を強調できると、E-1へのモチベーションをより強化できるかと思います
こうして君の初舞台はこれ以上ない成功を収めた。
最高の観客の最高のリアクション、君はこの成功体験を生涯忘れることはないだろう。
そして君は、万人に対してもこのリアクションのように最高の笑顔を求め、よりエンターテイメントの道にのめり込んでいくこととなる。



1-2. PC1導入②


それは3年ほど前のこと。
いつも通りの帰宅道。少し違うのは今が雨で君は傘を持っていないこと。
君がコンビニに寄ろうか、いっそ家まで走ってしまおうかと思案していた頃、思わぬ人物が君に傘をさしてくる。

「はい、お兄ちゃん/お姉ちゃん」

それは、見間違えるハズのない君の妹"一(はじめ)”だった。しかし彼女は入院しているはずだ。

「へへっ、おどろいた?」
「あのね、一時帰宅に許可が出たの。」

嬉しそうにはにかむ彼女、君にはその笑顔が本物だということが手に取るようにわかる。

「今日は家で御飯食べれるの、だから一緒に帰ろ?」

そう言って彼女は一本の傘を君と分かち合ったまま、君の手を引く。

▶妹との日常RP例


「久しぶりだね、お兄ちゃん/お姉ちゃんとこうやって一緒に歩くの。いつ以来だろう…」

「大丈夫だって、先生のお墨付きなんだからあんまり心配しないで」

「もう一個の傘?忘れっちゃった…」
「なーんて。お兄ちゃん/お姉ちゃんとこうやって一緒に歩きたかっただけ」


「…お兄ちゃん/お姉ちゃん」
「私、手術受けれることになったんだ」

帰り道をあるきながら、何気ない様子で彼女はそういう。

🎲判定:医学 or 応急手当-1
判定成功!
君は彼女の手術が念願であると同時に、臓器移植を伴うとてもむずかしい手術であることを知っている。
医者の腕、患者の体力、そして天運が必要になる難しい手術だ。しかし彼女に不安がっている様子はない。
判定失敗...
手術については難しくてよくわからなかった。
妹も特に不安がっている様子はない。

🔽不安そうじゃないことに突っ込む/心理学技能をふる 場合


※会話の流れで自然と話しても良い

「不安、無いわけじゃないよ。でもそれ以上に自信があるの」
「先生はもちろん、私もここ数年体調が良いから。それにドナーの人のことを考えると私は精一杯やるしか無いなって」

そう言って彼女はニカリと屈託のない笑みを浮かべる、それは心からの笑顔だ。

「それにね、最近ちょっと夢を見るの」
「よくわからないところにいるんだけど、体が自由に動いて」
「妹なんかも居ちゃったりして…ってこれはまぁいいか」


※検体No.001の意識と同調がこの時点で始まっているが、はじめはそのことを夢と思っている

帰り道でふとはじめが立ち止まって君に向き直る。

「あのね、私が手術を受けられるのは沢山の人に支えられてきたから。」
「でも、一番はお兄ちゃん/お姉ちゃんのおかげだと思ってる」
「…だから、ありがとうね。お兄ちゃん/お姉ちゃん」

そう言って笑った彼女の笑顔を君は今でも鮮明に覚えている。
それは君の人生で見てきたどんな笑顔よりも暖かく、降りしきる雨の中そこだけひだまりが出来たような、そんな錯覚を覚えるほどの素晴らしい笑顔だった。
しかし、それが君の記憶に残る彼女の最後の心からの笑顔でもあった。



PC2導入

1-3. PC2導入①


雨は降る、どこにでも。
現実のそれは、傘を差してしまえば防ぐことができる。
しかし、時に心のなかに降るそれは、自分ではどうしようもない。
君の姉は、君の心に雨がふるとき、そっと寄り添って笑顔という名の傘を差してくれる、そんな人間だった。

施設になれなかった子供の頃、君はよく施設を抜け出して一人泣いていた。
それが、心の内か実際に涙を流していたのか、それともその両方かはわからない。

そんなふうに一通り泣いて、人恋しくなってきた頃、決まって姉はどこからか君を迎えにやってきた。
目の見えない、どちらかというと迷子癖のある姉だけがなぜいつも君を見つけられるのか不思議だったが、そんなことより君は姉が迎えに来てくれることが嬉しかった。

「{PC2名前}ちゃん、見ーつけた」

そういって姉は、下手くそな笑みを浮かべながら君の傍らに腰掛ける。
そして決まって、君が何かを口にするまで君と同じ方に視線を向け笑顔のまま黙って隣りにいてくれる。

▶幼い君と姉とのRP例


PL なんで何も言わないの?

「ん?なんでだろう、話したくなさそうだったから…」


PL なんでいつも見つけられるの?

「なんとなく、{PC2名前}ちゃんの声が聞こえるの。私耳はいいから」


PL 聞こえる?

「そう、その人が泣いているのか、笑っているのか、それとも怒っているのか。そんな声がなんとなく。」


PL 下手な笑顔

「えへへ、なんかちゃんとした笑顔って忘れちゃって」


PL なんでいつも笑顔なの?

「これは私のおまじないなの」


「笑って、{PC2名前}ちゃん」
「つらい時ほど笑顔でいるの」
「笑顔でいればつらい気持ちも自然と吹き飛んでいくし、周りの人もきっと笑ってくれるから」
「だから、笑顔は世界一簡単で幸せなおまじないなの」

そんなふうに下手くそに笑う姉。
そんな笑顔を見ていると、ついつられて君も笑ってしまう。

「さ、帰りましょ」

彼女はそう言って君に手を差し出す。
触れた彼女の手はひだまりのように温かく、手を通して彼女の温かく広い気持ちが君にまで広がっていくようだった。

いつの間にか、君の心の雨は晴れていた。



1-4. PC2導入②


それは2年ほど前のこと。
その頃、日本全国が長雨や地震の影響で陰鬱な雰囲気に包まれていた。
テレビからはぽつりぽつりと笑いの要素が消え、ニュースと何百回と見た同じばかりCMが流れる。
幸いにして君の住んでいる地域は無事だったが、君たちもこの社会全体に降りしきる冷たい雨に呑まれつつあった。

🎲判定:芸術<お笑い> (技能値補正-20)
判定成功!
本日はなんとか場を賑わすことが出来たものの、場が冷えていて難しい仕事だった。
時勢的に致し方ないが、エンターテイメントに関わる人間として、この状況にもどかしさを感じずには居られない。
判定失敗...
ここのところこういった場が続いており、久しく満足に場を温めることが出来ていない。
人を笑顔にしようとこの職を志した身としては、無力感を感じざるを得ない。

君は今、仕事の帰り道であった。
今日も時勢を汲み取ってか冷たい雨が降る。
しかし、そんな現実の雨よりも、君は胸中に渦巻くもどかしい感情でいっぱいだった。

「はい、お疲れ様」

そのように思案を巡らせ帰路を歩んでいたら、いつの間にか最寄り駅についていたらしい。
そして、目の前には傘を差し出す一人の女性。
紛れもなく君の姉が立っていた。
思わず荷物を確認すればどうも今日は傘を忘れてしまっていたらしい。

「考え事?」

盲目にも関わらず人混みの中迷わずキミに傘を指した彼女は、君の顔色が見えないにも関わらず君の葛藤を見透かしたかのように声をかけてくる。
道ではすぐ迷子になるのに、不思議と誰かのもとにはまっすぐとたどり着く。本当に不思議な人だ。

▶姉との日常RP例


「大丈夫、{PC1名前}ちゃんは精一杯やれることをやってるし、それに救われている人もたくさんいるわ。私含めてね」
「私もできることをしなきゃね」


帰り道、姉と歩いているといつもよりたくさんの人間に声をかけられる。

▶街の人との日常RP例


「よう、恵美ちゃん。今帰りかい?これ持ってってくれよ」
「いつもありがとうおじさん」
「なーに、良いってことよ。おっ今日は{PC1名前}ちゃんも一緒か、じゃあこれも持っていきな」
そう言って精肉店の店主が、豚肉のブロックと、コロッケを2つ君たちに差し出してくる。

「あ、恵美おねえちゃんさようならー」
「はい、さようなら」
「あははー今日も変な笑顔!じゃあねー!」
親しげな様子で塾帰りの子どもたちがそう言って手を降って帰っていく。

彼女と歩いていると、今がくらい時勢なのも雨が降っているのも忘れてしまいそうだ。
それほど彼女の隣は心地よく、暖かかった。

「街の人は力強いわね、みんな色々大変でしょうに」

そう言って彼女は君に微笑みかける、笑顔の中心に自分があるなど知る由もないように。

▶姉との日常RP例


「豚肉ももらったし、今日はとんかつにでもしようかしらね」
「なんだかこうやって二人で帰ってると昔を思い出すわ、よくこうやって二人で帰ったわよね」

※姉は目が不自由ですが料理ができます

子供の頃から見慣れた屈託のない人を笑顔にする変な笑顔。
それが君が最後に見た彼女の笑顔だった。

突如、地がうねりを上げる。
波に揺られるかのように、周囲の人や建物が揺れ、衝撃に君たちは立っていられなくなる。

たった数瞬のこと。
それだけで周囲の様子は一変していた。
降り注ぐ人々の悲鳴と泣き声、雨に潰れる建物の数々。
幸い、君たちの周りには倒壊する建物もなく、木々や電柱も無事だ。
しかし、大きな揺れのせいか、君は軽く足を捻ってしまったようだ。

姉はというと、怪我をした様子はないが、頭を抑えてその場にうずくまっている。

「…あ、ああっ」
「泣かないで…みんな…」
「痛い、苦しい、寂しい、悲しい、なんで、なんで…」

「いや、いや…あ、ああっ…ああ、ああああっ…!」


そう言うと彼女は突如、叫びながら走り出してしまう。
あっという間のことだった。手を取る暇もなく、彼女は人混みに紛れ、追おうにも君の足は言うことを聞いてくれなかった。

あの日以来、君は彼女と再会できていない。